4日目はのりこさんと陽子ちゃんが話す

メインシーンの奥で私達が料理している背景が

映り込む撮影だった。

 

白米を炊こうとしている私達にのりこさんが

怪訝な顔をして、蒸気の音がいつ撮影の邪魔を

するかわからないからという理由で

明らかなNOサインが出たので

すぐにやめようとした。

 

 

緊張感で張りつめた現場で

もう間もなく撮影開始というときに

ラファエルが来て、

なぜ炊くのをやめるのか?

昌子と一緒に決めたのなら炊けばいい。

自分はこの後、炊きたての白米が食べたいし

炊飯器の音が撮影を邪魔するとは思えない。

大丈夫だ、炊いていいんだよ、と言う。

 

私は、のりこさんがやめて欲しいと

言っているからやめると説明したけれど、

 

あなたはどう思ってるの?

昌子と一緒に炊くと決めたんだよね?(私の意訳)と

聞くので、詰めよられてるように知覚されて

頭が真っ白になった。

自分が何を感じ何を思ってるのかわからなくなった。

波風が立ちそうな気配を感じてただ恐ろしくなって

ただちに事態を鎮静化させたい。それだけ。

かろうじて口から出たのは「撮影が優先」だった。

 

混乱と困惑。

のりこさんがNOと言ったら私もNO。

私がどう思うかとかなんてどうでもいいから

やめたい。米炊くのやめたい。

のりこさんに対して叱られたくないという恐れ。

でも、監督は炊いてもらいたがってる。

どうしていいのかわからない。

まさこさんとは一緒に決めたからYESとは答えたけど。

 

ラファエルがのりこさんを

説得しに行ったのを見て、

なんだかもういたたまれなく

居心地が悪かった。

 

 

ものすごい視野狭窄

撮影は始まったけれど

メインの撮影現場への心の配り方と

いったら、足音を立てないだとか

食器の音をガチャガチャ立てないとか

行為者レベルの低いもので

無価値感の中、自分が

やっていることだけにしか神経が

いっていなかったと認めないといけない。

 

 

ワンマインドからかけはなれていた状態。

撮影途中、ラファエルがカメラを

私達の至近距離で追加していた。

何をどう撮ろうとしていて

自分がどのようにそこに映り込む

可能性があるかとか

ジーザスは今なにを望んでいるだろうか

全く無頓着になっていた。

私のみが無頓着で仲間たちは気が付いていたし

私に対してサインも発していた。

けど、立ち止まれなかったし、見ようと

していなかった。

 

チューニングも

ゴンゴン頭打ちしてる状態で

ジャンプしてるようなもので、

ゴンゴン何にぶつかってるのかというと

これは後で教えてもらったから

書けるけれど

「認められたい!私が!」という欲望が

邪魔しているからどうにもこうにも

ならない。

 

撮影終了して、みんな揃っての中

食事が始まってすぐ

のりこさんが泣きながら

私に向かって、

ご飯のことなんてどうでもよかったの!と

訴えた。

なぜ理解してくれないのか!?

なぜ理解できないのか!?

きづけないのか。。

集中して放っておいてほしいときに

なぜ不要なお風呂の報告をしてきたのか。

意味が全くわからない。

半日の撮影のために20時間かけて来た

陽子さんのこと。。

この映画に対して懸けている想い。

「個人」というものを持っているともう地獄だ。

本当に内側のみに向かって行きたい。。

 

そう話しているのりこさんを目の前にして

鈍感ゆえに突然始まったことのように自分には

感じるものだから全く気が動転した。

のりこさんの隣で冷静に聞いているラファエルは

もう自分の視界に入れることができなかった。

 

そして、それに続いて

仲間たちも、肝心なところで

的外れな行いをした私によって

使えなくなってしまった

撮影シーンができてしまったことに

強い投影が起きたことを

告白していくということが起きて、

心の中がパニックだった。

 

とにかく自分がとりかえしのつかない

ひどいこと・・・・貴重なまたとない

撮影、時間、お金、みんなの気持ちを

著しく傷つけて、大切なもの・神聖な

ものを台無しにして

破壊してしまったんだ・・・・

とんでもないことを

しでかしたことはわかるけれど

それ以上何も考えられない。

何が自分の身に起きてるのか理解できなかった。

 

それでも最初はなんとか自分を保とうと

冷静に仲間の話を

受け止めようとするマスクというか

強がりがあったけれど、もう後がなくなって

崩壊してしまった。

 

なんとかのりこさんに謝罪したけれど

その後の自分の口から出てくる弁明めいた

ものはどれも的外れで、仲間からもズレてると

制止されたし、何を話しているのか自分でも

わからなくなった。

 

情けなくて、情けなくて、

どうして自分はこんなにも

しょうもない奴なんだろうと

猛烈な恥の感情で消えてしまいたくなった。

 

 

わんわん泣いている私を

黙って見ている皆の方が泣きたいはずだ。

こんな私に撮影をめちゃくちゃにされて。

 それでいて、強い被害者意識。

自分可愛さ、何かの犠牲者になっている

と握ったままだった。

 

ラファエルが聖霊の言葉を私にかけてくれるけれど

受け入れられない。

 

のりこさんが

「認められたいという強い気持ちが

あることを認めないといけない。」と

声をかけた。

 

本当にそうだった。

本当にそれだけになってしまっていた。

 

ひとしきり泣いて

時計を見た時にギョッとしてしまった。

3時間近くも泣いて、付き合わせてしまった。

 

その後お風呂に入らせてもらったのだけど

ああ、みんなに皿洗いをさせてしまっている

じゃないかと罪悪感でどうしようもならなくなった。

 

陽子ちゃんから、

ジーザスが主役で私達は脇役なのだ。

でも自分の癒しのために自分事として

この映画に本気で関わっていかないと

いけない、という言葉をかけられて

私はこれについて本当に考えなければ

いけないと思った。

 

本当にこんなに自分の中が

ひどい状態だとは知らなかった。